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自然気胸

具体例

この症例は、患者さんの了解を事前に得ておりますので、ご心配は無用です。症例は30才台の男性で、やはり喫煙者でした。ある朝目を覚ますと、突然右の胸が痛くなり、その二日後に当院を受診されました。身長は176cmで、体重は73kg と堂々たる体格でした。 年令体格からは、「自然気胸はどうかな?」という印象でしたが、鑑別診断の目的で、胸部エックス線写真を撮ったところ驚きました。(写真01)がそのときのものです。右の肺がほとんどしぼんで、心臓右の白い固まりとして写っています。これでよく平気で歩いて来て、受診できたのかが不思議なくらいです。


  • 写真01

このように自然気胸という病気は、発症直後に痛みを自覚しますが、時間が経てば痛みに慣れてしまうことがあります。痛みが和らぐために受診が遅れることもしばしばです。しかしこのような時でも、階段や坂道で息切れが出るのが特徴です。
次に手術中の肺嚢胞の内視鏡写真が(写真2)です。 肺臓の頂上付近に白いふくらみがあります、これが肺嚢胞なのです。拡大写真が(写真3)です。
また肺嚢胞を切除している写真が、(写真4)です。手術で切除した肺嚢胞が(写真5)です。


  • 写真02

  • 写真03

  • 写真04

  • 写真05

つぎに退院前の胸部エックス線写真が(写真6)です。 ドレーンはすでに除去され、ほぼ完全に右の肺は再膨張しております。この患者さんは、術後9日目に全抜糸(4針程度)を終えて退院されました。ご自宅が市外であったため、抜糸後に退院されましたが、市内の患者さんの中には、抜糸前に退院される方もおられます。
以上、自然気胸の具体例を説明いたしました。


  • 写真06

自然気胸は難しい病気ではありませんが、初期治療が遅れると、緊張性気胸(漏れた空気が血管や心臓を圧迫する重症の気胸)や、血気胸(肺がしぼむときに癒着がはがれて、そこから出血する気胸)のため、思わぬ事態を招く事があります。決してあなどらず、確かな診断と、治療を受けられることをおすすめします。

手術の進歩

- 自然気胸に取り組んだきっかけを教えて下さい。
きっかけは恩師からの勧めです。学会発表や論文発表に精力的に取り組みました。今ではライフワークとなり、自然気胸のオペをしている時が最も充実感があります。外科手術に限らず、様々な対応方法があり、総合的な治療ができます。
- 親族の手術も、院長ご自身が担当されたというエピソードが、心に残りました
偶然にも、自分の息子と甥が、自然気胸になりました。迷わず、私自身がオペを行いました。研究と経験を重ねておりましたので、自分がベストの執刀医という自負がありました。
- 自然気胸の治療に関して教えて下さい。
従来は軽症ならば安静加療、それで駄目なら胸腔ドレナージ、これで再発すれば開胸手術という治療の流れがありました。しかし90年代に、胸腔鏡手術という患者さんにやさしい治療法が日本でも導入され、この流れが一変しました。
- 患者さんにやさしいとは、具体的にどういうことでしょうか
以前、呼吸器外科学会でも発表しましたが、わかりやすく言いますと
(1)小さな傷で手術ができる。
(2) 術後の痛みが非常に軽い。
(3) 術後のドレーン挿入期間が短い。
ドレーン・・・術後の血液や浸出液、空気などを体外に導く細いビニールの管
(4) 術後早期に退院でき、職場復帰がすみやか。
このような理由から、初めての発症から胸腔鏡手術を受ける患者が増加しました。
再発をくりかえした後に腹腔鏡手術を受けるよりも、最初から胸腔鏡手術を受けた方が、患者の負担が少ないからです。
- 自然気胸の再発に関して教えて下さい
胸腔鏡手術は、再発率が高いと言われています。まず、開胸手術による再発率は、1~2%とされています。ところが胸腔鏡手術では7~10%の再発率と言われていました(1995年、アメリカ)。(参考文献3) 最近では改善されたとはいえ、3.6%の再発率と言われています(2004年、フランス)。
- 再発率を下げる工夫はされているのでしょうか
再発の原因究明や、少しでも再発率を下げる工夫が、呼吸器関係の学会で多数発表されています。しかし胸腔鏡手術による再発率は、各施設間で大きく異なっているのが現状です。
- けご病院の実績を教えて下さい
当院では1992年から2001年12月までの累計で、自然気胸の治療を約300例行っております(開胸手術と胸腔鏡手術の双方を含む)このうち1999年1月から2001年12月末までの3年間に行った胸腔鏡手術58例中、再発は1のみでした(再発率1.7%)。 また開胸手術66例中、再発は1例のみでした(再発率1.5%)。けご病院においては、胸腔鏡手術と開胸手術で、手術成績に差がなくなったと言えます。再発率を下げるために様々な工夫をしています。より良い被覆材が登場するなど、医療技術 の進歩も寄与していますが、自然気胸に対する研究心が何よりも大事だと考えます。

Q&A

- 自然気胸はやせた人に多いので、筋肉をつけたり太ったりすれば再発は防げる?
体型をあとから変えても自然気胸を起こしやすさに変わりはありません。
- 肺が弱いから自然気胸を起こすのだから、肺をきたえればいい?
むしろ肺をいたわってあげましょう。いわゆる肺気腫や気腫性肺嚢胞の患者さんには呼吸のリハビリがありますが、気胸を起こさないようにきたえる方法はありません。
- 一度自然気胸を起こした人はスポーツに復帰できない?
そんなことはありません。手術治療で一定期間(約3ヵ月)を過ぎれば少しずつ運動量を増やし、もとの状態に復帰できます。
- 歳をとれば気胸を起こさなくなる?
以喫煙者は中年過ぎに気胸を起こす患者が増えます。これは続発性気胸(肺に色々な病変があるために起こす気胸)に属すると考えられます。
- 女性でも若くて身長が高い人に気胸を起こしやすい?
女性の場合男性のように身長に左右されません。しかし月経随伴性気胸(月経周期にあわせて気胸が起る)のように 月経がある女性特有の気胸があります。
- 片方の肺の自然気胸の手術をした人はもう片方にも自然気胸を起こしやすい?
その通りです。当院での場合、約25%の気胸の患者さんがもう片方の肺に気胸を起こしています。たとえ発症しなくとも胸部CT 検査でもう片方の肺に肺嚢胞(ブラ)を認めることが多いようです。
- 女性の方が再発しやすい?
一般的な話ですが、確かに女性の方が手術中に気胸の原因となった肺嚢胞が発見できなかったり、逆に肺嚢胞が多発していたりすることが多く、さらに月経随伴性気胸のように病変が肺に限らず横隔膜にあることもあり、再発の頻度は高いようです。
- 安静にしておれば自然気胸を起こすことはない?
自然気胸の患者さんの話を聞いていますと、必ずしも運動負荷時に発症していません。眠っているときや、電車に乗って座席に座っているときや、教室で授業を受けているとき、町を歩いているときなどが意外に多いようです。
- 自然気胸は遺伝する?
確かに遺伝します。自然気胸の患者さんの親兄弟に自然気胸の患者さんがいる頻度は非常に高く、当院でも1卵生双生児にほとんど同時期に自然気胸を発症したという症例を経験しました。
- 自然気胸の手術をすれば肺の機能が落ちる?
まず機能が落ちることはほとんどありません。むしろ大きめの肺嚢胞の場合などは、これを切除することにより改善する可能性すらあります。 また内科的に癒着療法のみにたよると胸膜(肋膜)の肥厚を起こし、機能の低下を招く事があります。
参考文献
1) 八板英道 他. 自然気胸に対する胸腔鏡手術の特徴 : 開胸手術との比較. 日呼外会誌 1996;10:95-97.
2) 八板英道 他. 自然気胸術後アンケートによる創痛に対する術式別検討.日呼外会誌 1996;10:445-449.
3)Cole FH Jr, et al. Video-assisted thoracic surgery: primary therapy for spontaneous pneumothorax? Ann Thorac Surg. 1995;60:931-3.
4)Gossot D, et al. Results of thoracoscopic pleural abrasion for primary spontaneous pneumothorax. Surg Endosc. 2004;18:466-71.

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